2003年にMITでプロジェクトがスタートして以来、スクラッチは多くのユーザ、財団、企業、投資家の支援を受けて継続、進化してきました。2014年現在では150カ国以上、40以上の言語で利用可能となり、ユーザ数も月間20万人を超えるようになっています。特に2013年の秋以降、ユーザ数が大きく伸びています。明確な原因はスクラッチサイトなどでは紹介されていませんが、ハーバード大学やカリフォルニア大学などのMOOCS(大学の無料ネット公開講座)によって、教材としての使い方が紹介されたことと関係があるように思えます。これらの大学では、大学生にコンピュータサイエンスの初歩的な内容を教えるためにスクラッチを教材として活用しています。
スクラッチはもともと小学生以上の子供達を対象に開発されましたが、現在ではスクラッチの派生版も含めて大学教育でも活用が進むようになってきました。本書の第10章で、このような大学でのスクラッチおよびその派生版の活用方法をMOOCSを例にして紹介しています。日本でも今後高校や大学でスクラッチの活用が進んでいくものと思われます。また、スクラッチプロジェクトは幼児へ対応する方向でも開発が進んでいます。タフツ大学の研究者を中心にしてスクラッチジュニアと呼ばれる幼児向けのスクラッチが2014年の秋には登場する予定です。タブレットで動く新しいスクラッチとして、今後国際的に活用が進むことでしょう。
このように、スクラッチは現在では幼児から大学生まで幅広いユーザによってICT教育、コーディング教育(プログラミング教育)のベストな教材として利用が進んでいます。この本を手にとった皆さんも、本書で紹介した基本的な使い方、MOOCSを利用した大学レベルのコンピュータサイエンスを学ぶ上でのポイントを学んでスクラッチワールドを楽しんでいただければ思います。