構造化並列プログラミング
効率良い計算を行うためのパターン
- 著者 マイケル・マックール／アーク・D・ロビソン／ジェームス・レインダース（共著）
- 訳者 菅原 清文／エクセルソフト株式会社（共訳）
- 判型 B5変型判、520頁
- 本体価格 6,000円
- ISBN 978-4-87783-305-3
2013年3月10日 初版第1刷発行
本書について
デザインパターンや設計パターンと呼ばれる技術書の代表的なものに、エーリヒ・ガンマ氏、リチャード・ヘルム氏、ラルフ・ジョンソン氏そしてジョン・ブリシディース氏らによる「オブジェクト指向における再利用のためのデザインパターン」、俗にGoF（Gang of Four）のデザインパターンがあります。皆さんにもよく知られるC++プログラミングにおけるバイブル的な存在で、その後いくつかのデザインパターンに関する書籍、文献も登場しました。
本書はまさに、並列プログラミングにおけるデザインパターンを示す手引書です。パターンの概念を文書や図表だけで理解いただくのは容易でないため、本書では随所にサンプルコードが紹介されています。すでに皆さんが設計された並列アルゴリズムが、どのパターンに該当するか検証されてみるのもいいでしょう。すでに業界標準となっているOpenMPやTBB、Cilk Plusなどによるパターンの実装例が示されていますので、C/C++、そして一部Fortranを利用する開発者の皆さんに役立つと思います。
サンプルプログラムのダウンロード（code_JP.zip、約225KBytes）
目 次
- 第1章 概要
- 1.1 並列思考（Think Parallel）
- 1.2 パフォーマンス
- 1.3 モチベーション：拡散する並列性
- 1.4 構造化されたパターンベースのプログラミング
- 1.5 並列プログラミング・モデル
- 1.6 本書の構成
- 1.7 まとめ
- 第2章 背景
- 2.1 用語と表記
- 2.2 戦略
- 2.3 メカニズム
- 2.4 マシンモデル
- 2.5 パフォーマンス理論
- 2.6 落とし穴
- 2.7 まとめ
- 第3章 パターン
- 3.1 ネストパターン
- 3.2 構造化シリアル制御フローパターン
- 3.3 並列制御パターン
- 3.4 シリアルデータ管理パターン
- 3.5 並列データ管理パターン
- 3.6 ほかの並列パターン
- 3.7 非決定論性のパターン
- 3.8 パターンのプログラミング・モデル・サポート
- 3.9 まとめ
- 第4章 マップ
- 4.1 マップ
- 4.2 スケールされたベクトル加算（SAXPY）
- 4.3 マンデルブロー
- 4.4 マップのシーケンスとシーケンスのマップ
- 4.5 並列モデルの比較
- 4.6 関連パターン
- 4.7 まとめ
- 第5章 集合
- 5.1 レデュース
- 5.2 マップとレデュースの融合
- 5.3 ドット積
- 5.4 スキャン
- 5.5 マップとスキャンの融合
- 5.6 積分
- 5.7 まとめ
- 第6章 データ再構成
- 6.1 ギャザー
- 6.2 スキャッター
- 6.3 スキャッターからギャザーへの変換
- 6.4 パック
- 6.5 マップとパックの融合
- 6.6 幾何学分解と分割
- 6.7 構造体配列と配列構造体
- 6.8 まとめ
- 第7章 ステンシルと繰り返し
- 7.1 ステンシル
- 7.2 シフトを使用するステンシルの実装
- 7.3 キャッシュ向けステンシルのタイリング
- 7.4 通信向けステンシルの最適化
- 7.5 繰り返し
- 7.6 まとめ
- 第8章 フォーク・ジョイン
- 8.1 定義
- 8.2 フォーク・ジョインをサポートするプログラミング・モデル
- 8.3 マップの再帰実装
- 8.4 基底ケースの選択
- 8.5 ロードバランス
- 8.6 並列分割統治の複雑性
- 8.7 カラツバ法の多項式乗算
- 8.8 キャッシュの局所性とキャッシュを意識しないアルゴリズム
- 8.9 クイックソート
- 8.10 リダクションとハイパーオブジェクト
- 8.11 フォーク・ジョインを使用するスキャンの実装
- 8.12 繰り返しへのフォーク・ジョインの適用
- 8.13 まとめ
- 第9章 パイプライン
- 9.1 基本パイプライン
- 9.2 並列ステージを含むパイプライン
- 9.3 パイプラインの実装
- 9.4 パイプライン向けプログラミング・モデルのサポート
- 9.5 より一般的なトポロジー
- 9.6 義務的並列性と任意の並列性
- 9.7 まとめ
- 第10章 フォワード地震シミュレーション
- 10.1 背景
- 10.2 ステンシル計算
- 10.3 演算強度へのキャッシュの影響
- 10.4 時空のタイリングによる算術強度の上昇
- 10.5 Cilk Plusコード
- 10.6 ArBB実装
- 10.7 まとめ
- 第11章 K-平均法クラスタリング
- 11.1 アルゴリズム
- 11.2 K-平均法とCilk Plus
- 11.3 K-平均法とTBB
- 11.4 まとめ
- 第12章 bzip2データ圧縮
- 12.1 bzip2アルゴリズム
- 12.2 TBBを使用した3ステージのパイプライン
- 12.3 TBBを使用した4ステージのパイプライン
- 12.4 Cilk Plusを使用した3ステージのパイプライン
- 12.5 まとめ
- 第13章 マージソート
- 13.1 並列結合
- 13.2 並列マージソート
- 13.3 まとめ
- 第14章 サンプルソート
- 14.1 全体の構造
- 14.2 ビン数の選択
- 14.3 ビニング
- 14.4 再パックとサブソート
- 14.5 サンプルソートのパフォーマンス解析
- 14.6 C++向けの高度なトピック
- 14.7 まとめ
- 第15章 コレスキー分解
- 15.1 FORTRANの規則
- 15.2 再帰的なコレスキー分解
- 15.3 三角分解
- 15.4 対称階数更新
- 15.5 時間がかかる場所は?
- 15.6 まとめ
- 付録A 参考資料
- 付録B Cilk Plus
- 付録C TBB
- 付録D C++11
- 付録E 用語集