情報化社会の到来を象徴するように、デジタル処理を中心にしたIT化の動きは、社会の隅々で同時並行的に、かつ加速度的に進行しています。
この急激な変化は、当然のごとく日常業務の事務処理にも影響を与えています。たとえば、そろばん・電卓で行っていた従来の集計計算は、今ではパソコンを利用しての処理に変わっています。エクセルなどの表計算ソフトを利用するなら、迅速・正確に結果が得られることは誰もが体験済みのことです。パソコンは苦手と避けていた人をも取り込んで、エクセルを使いこなすことが、事務処理担当の必要条件になっているのは言うまでもありません。事務処理の必須アイテムとしてのエクセルの重要性は、今後ともますます高まっていくでしょう。
ところでこんな便利なエクセルなのですが、これで万全かというと、まだまだ不十分なところがいくつかあります。たとえば、「売上明細表」から「請求書」を起こすような場合です。
「売上明細表」も「請求書」も、それ自体はエクセルで簡単に作成できます。しかし月末に、「売上明細表」の内容に基づき、得意先別の「請求書」を作成し、それを次々に印刷していくとなると、もうエクセルではお手上げです。せいぜい「売上明細表」をプリントアウトして、それを見ながら「請求書」を一枚一枚作っていくのが、その限界と言って良いでしょう。つまり「売上明細表」と「請求書」のデータをやり取りする能力に欠けているのです。この部分をカバーし、一連の処理をスムーズに実現してくれるのがVBAによるマクロなのです。
通常「自動処理」と言われるマクロを組み込むなら、実行ボタンを押せば次々にプリントアウトしてくれることになるのです。VBAによるマクロを組み込んだエクセルこそ、まさに究極の事務処理アイテムと言って良いでしょう。このVBAについて、次の点については是非ともご理解いただきたいと考えます。
それは、VBAマクロを使わないエクセルで止まっていては、情報化の流れに取り残されてしまう、ということです。かつてエクセルを使えるか否かで事務担当の「選別」が行われたのと同様の動きが、対象をVBAに移し、再度繰り返されるはずです。ここにおいては、形式的に、あるいは文法的にVBAを「知っている」ことなど、何の役にも立ちません。使えるVBAを身に付けた人だけが、淘汰の試練にうまく勝ち残れるのです。
本書は、以上の考えを踏まえた上で、初心者に分かりやすい、「使えるVBA」を目指しました。読者諸氏の情報スキルを高めていく「きっかけ」に、本書がなることを願います。